10 月インバウンド売上高、10 月として過去最高

円安と国慶節休暇が追い風

 日本百貨店協会は11月25日、10月の全国百貨店における免税売上高(インバウンド売上高)が前年同月比7・5 % 増の546億7000万円となったと発表した。本年2月以来8か月ぶりに前年を上回った。

 為替が150円台半ばの円安傾向にあったことに加え、中国の国慶節休暇に伴う訪日客数の増加が追い風となり、免税売上高・購買客数ともに10月として過去最高を記録した。

 ただし、2025年1月から10月までの免税売上高累計は、4645億円となり、円安とラグジュアリーブランドの値上げ前の駆け込み需要で大きく伸びた前年同期の5347億円と比較すると、13.1%の減少となる。

(図表1、2、3参照)

全国百貨店売上高、3か月連続前年超え インバウンド比率上昇

 10月の全国百貨店売上高は、前年同月比4・3%増の4668億円となり、3か月連続で前年実績を上回った。

 国内市場の堅調な需要に加え、インバウンド売上高が前年同月比7.5%増と回復したことも寄与した。国内では、10月下旬以降の気温低下に伴い秋冬物衣料品が好調に推移したほか、株高による資産効果を背景に化粧品や時計・宝飾などの高額品を含む雑貨・身の回り品が伸び、全体の押し上げ要因となった。

 インバウンド売上高の全体売上に占める 構成比率は11.7%となり、前月の9.2%から上昇した。

購買客数、10月としては過去最高 中国が首位、アジア勢が上位占める 

 インバウンド購買客数は、8月以来3か月連続して前年を上回り前年同月比8.9%増の56万4千人となった。今年最多だった1月の59万1千人に次ぐ多さとなり10月としては過去最多を記録した。

 中国、台湾が売上・購買客数ともに増加。国・地域別では、中国が最多で、次いで台湾、韓国、香港、タイ、シンガポール、マレーシアの順。アジア諸国が上位を占め、引き続き百貨店におけるインバウンド消費を支えている。

一人当たり購買単価、9か月連続で前年割れも減少幅は縮小

 一人当たり購買単価は、前年同月比1.2%減の約9万6千円となり、2月以降9か月連続で前年割れとなった。

 ただし、減少幅は徐々に縮小しており、購買単価はほぼ前年並みの水準まで回復している。

 なお、これまでで最も高かった一人当たり購買単価は、2024年5月の12万6千円である。

売上人気商品、化粧品・ハイエンドブランド・婦人服飾雑貨・食料品

 売上構成における人気商品は、前月とほぼ変わらず、化粧品、ハイエンドブランド品(特選・バッグ等)、婦人服飾雑貨、食料品、婦人服が上位を占めた。中でも、化粧品や食料品などの消耗品カテゴリーの売上高は、前年同月比で19.1%増となり、5か月連続2桁の伸びを記録するなど堅調に推移した。

10月として最多の389万人 訪日客数、過去最高を更新

 日本政府観光局(JNTO)は11月18日、10月の訪日外国人旅行者数(推計値)が前年同月比17.6%増の389万6300人となったと発表した。これは過去最多を記録した今年4月の約390万人に次ぐ規模で、10月としては過去最高を記録した。

 1月から10月までの累計訪日客数は3554万人に達し、前年同期比17.7%増。前年の年間訪日客数3687万人にほぼ並び、円安傾向を追い風に過去最高のペースで推移している。年間4000万人を超える勢いで伸びており、政府が掲げる「2030年までに訪日客数6000万人」という目標に向けて着実に進んでいる。10月は紅葉シーズンの始まりに加え、東南アジアの連休に合わせた訪日需要が伸びたほか、欧米豪、中東からの旅行者も伸びた。国別では、韓国が前年同月比約13万5千人増加したほか、中国が13.2万人増、台湾が11.6 万人増、米国が5.7万人増となった。さらにロシア、ドイツ、英国、フランスなどからの旅行者も増加し、全体の増加を後押しした。
(図表3、7参照)

韓国が最多 上位5か国で全体の7割

 10月の国・地域別訪日外国人客数では、韓国が86万7200人で最多となった。

 続いて中国(72万人)、台湾(60万人)、米国(34万人)、香港(20万人)の順で、上位5か国・地域で全体の約7割を占めた。
(図表7参照)

カナダ、メキシコ、仏、露、北欧からの訪日客、単月で過去最多

 10月の訪日外国人旅行者数では、カナダ、メキシコ、フランス、ロシア、北欧地域からの訪日客が単月で過去最多を更新した。

 さらに、10月として過去最高を記録した国・地域は、韓国、台湾、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム、インド、豪州、米国、スペイン、ドイツ、イタリア、中東地域の計13にのぼり、インバウンド需要の裾野が確実に広がっている。

上位5か国の動向

 10月の訪日外国人旅行者数で全体の7割を占める上位5か国の動向は以下の通り。

・韓国

86万7200人(同18.4%増)。秋夕(チュソク)連休や、清州〜那覇間の新規就航、釜山〜新千歳間、釜山〜長崎間の増便をはじめとした航空座席数の増加が寄与し10月として過去最高を記録した。

  • 中国

訪日客数は71万5700人(前年同月比22.8%増)。国慶節と中秋節の連休に加え、福州〜成田間、上海〜成田間の増便等などが追い風となり、前年を大きく上回った。

  • 台湾

59万5900人(同24.4%増)。台北桃園〜福岡間の増便、台北桃園〜神戸間のチャーター便の運航、さらに10月に3連休が3度あったことが後押しし、10 月として過去最多を更新。

  • 米国

33万5700人(同20.6%増)。訪日人気の継続に加え、航空座席数の増加、クルーズ需要の高まりを背景に10月として過去最高を更新した。

  • 香港

14万9500人(同12.2%減)。クルーズ船の寄港等はあったものの、前年は重陽節が3連休だったのに対し今年は連休にならなかったこと等の影響により、訪日外客数は前年同月を下回った。

中国政府、日本渡航の自粛呼び掛け 観光需要への影響懸念

 中国政府は11月14日、自国民に対し日本への渡航を控えるよう呼び掛けた。高市総理大臣による「台湾有事」をめぐる国会答弁に反発した措置とみられる。

 一部では、中国の航空会社による日本行きフライトの運休やキャンセル、旅行ツアーの中止、さらに国有大手旅行会社による日本旅行の新規予約停止といった動きも確認されている。香港政府も16日、日本渡航の際には警戒を強め、安全に十分注意するよう呼び掛けた。

買物消費で突出する中国人観光客

 2025年7〜9月期における中国からの訪日客数は276万人と最も多く、全体に占めるシェアは27.3%に達した。観光庁によると、旅行消費額も5901億円で国・地域別ではトップとなり、シェアは27.7%を占めている。

 支出項目別では買物代が5427億円で、そのうち中国人観光客が1941億円と突出して多く全体の35.7%を占めており、一人当たりの買い物代は7万5237円と多く、百貨店業界での中国人観光客の存在感は非常に大きい。

 さらに、同調査によれば、中国からの旅行客のうち個人旅行者は84.4%を占めている。団体ツアー旅行は15.6%にとどまり、旅行会社の個人旅行プランを利用した人や、自ら航空券などを手配した人の割合が大半を占めている。

 こうした状況から、今後は特に来年2月の春節(旧正月休暇)に向けて、個人旅行の動向が注目される。
(図表4参照)

過去の事例と今後の注目点

 中国では、過去にも2012年9月、尖閣諸島の国有化をきっかけに大々的な反日デモや、日本への渡航自粛により翌年には訪日客数が前年比で約25%減少した経緯がある。今回の呼び掛けが訪日観光需要にどのような影響を及ぼすか、今後の推移が注目される。
(図表5,6参照)

国際観光旅客税・ビザ手数料引き上げ・免税制度見直し インバウンド消費に懸念

 政府は、オーバーツーリズム対策や観光インフラ整備などの財源確保を目的に、国際観光旅客税(出国税)、訪日ビザ(査証)申請にかかる手数料の引き上げや、免税制度の見直しの検討している。

国際観光旅客税引き上げ

 国際観光旅客税(出国税)は、2019年に導入され、日本を出国するすべての旅行者から一律1000円を徴収している。航空券代金などに上乗せされる形で徴収され、観光インフラ整備や情報発信などに活用されてきた。今回の見直しでは、税額を数千円規模に引き上げる案が浮上している。

ビザ手数料引き上げ

 ビザ申請手数料については、現在の一次ビザ3000円、数次ビザ6000円をG7諸国並みの数万円水準への引き上げる方向で検討が進んでいる。

免税制度見直し

 さらに、訪日客向けの免税制度も、令和7年度税制改正により、26年11月1日から現行の即時免税方式から、リファンド方式(事後還付)に移行する予定だ。

 こうした一連の値上げや制度変更は、訪日客の購買意欲や消費行動に影響を及ぼす可能性があり、インバウンド消費が回復基調にある現在、今後の売上動向への影響を注視する必要がある。