大手百貨店グループ4社が決算発表

 三越伊勢丹を筆頭に、インバウンド景気を背景として、各社とも最高益を更新した。

 コロナ禍には「構造不況業種」どころか「絶滅危惧種」とまで言われたのが嘘の様な百貨店業界の復活・好調ぶりだ。因みに「絶滅危惧種」と言ったのは本紙かもしれないが。

 百貨店主要4社の2024年度決算はそろって過去最高益を更新。訪日観光客の旺盛なインバウンド需要を取り込み、コロナ禍で苦しんだ4年前から劇的な復活を遂げた、と言って良いだろう。言うまでもないが、好決算は一部「都心大手」に限られる。

 空前の好決算となった三越伊勢丹、J.フロントリテイリング(大丸松坂屋)、阪急阪神、髙島屋の大手4社に対し、一方ではインバウンドバブルもなく、過疎化や不況だけが進む地方百貨店の苦境は出口が見えない。大型ショッピングモール進出のターゲットとなるのは地方、郊外だけであり、このことも百貨店の明暗に大きく影響している。日本の「格差社会」は、特に地方で、売り手であるデパートと、買い手である顧客双方にとってリアルで残酷な現実を映し出している。

 小売業態の中で、百貨店はこの30年間、不況業種として認識されてきた。2000年以降、親会社であるセブン&アイによるそごう・西武の売却や、地方百貨店の破綻・閉店が相次いだことにコロナ禍が追い打ちをかけ、食品以外に「生活必需品」を扱っていない百貨店の来店客数は激減した。中でも直近のコロナ直撃ダメージは都心、地方を問わず大きく、各社とも2020年4月5月の売上高は、軒並み前年比80%以上の大幅マイナスとなった。前年の2割しか売れなかった、という話だ。

 それが現在、百貨店主要4社の2025年3月期の決算は、そろって過去最高益を更新した。富裕層シフトとインバウンド需要の独り占めにより、都心に限っては往年の強さを取り戻した様にも見える。少なくとも今現在はそうだ。

 都心と地方の格差の要因は、本紙6月1日号の4面コラム「デパートのルネッサンスはどこにある?」でも言及した、国内の景気回復と円安による爆発的なインバウンドバブルだ。
※この2か月はトランプショックにより、インバウンドにやや翳りが見えるが。

 三越伊勢丹HDの免税売上高は、新型コロナ前の2018年度と比べ、6年後の2024年度は2倍超の1700億円に到達した。旗艦店である伊勢丹新宿本店では、年間売上高に占める免税売上高は約18%にまで拡大したのだ。※因みに同年の松屋銀座に至っては、売上の半分がインバウンド関連だ。

 さて、最高益を実現させた要因を某証券アナリストは、「国内の小売業にとって最大の課題であるオーバーストアを解消できたことが大きい」と指摘している。

 もちろん実態として店舗数も、百貨店売上高と連動して減少している。確かに2 0 2 4 年は2014年に比べ、62店舗減の178店となった。直近10年間でも、3分の2に減ってしまったのは事実だ。

 筆者が問題だと思ったのは、前述のアナリストの発言を受け、オンラインニュースがこれを「百貨店各社は10年前から地道に閉店を続けた。」と評していることだ。まるで百貨店各社が業界として「前向きに閉店して来た」様に聞こえるのだ。アナリストの言う「オーバーストアの解消」自体、結果そのものは間違ってはいないが、ネットニュースの言う「地道に閉店を続け」とは、いったいどうゆう意味だろう。

 もちろん大手百貨店グループが、不採算の地方店舗をリストラする(例えば岐阜髙島屋の様な)例も少なくない。近鉄やそごう・西武など他のグループも同様だ。

 但し、今年の3月末で閉店した松本市の井上百貨店の様に、地元で文字通り孤軍奮闘し、それでも力尽きて閉店を余儀なくされた地方の独立系百貨店に対して「地道に閉店を続けた」という表現は、あまりに酷であり、デリカシーの欠片も感じられない。

 一部のメディアに限ってであろうが、本当に業績と株価しか見ていないのが解る。

 隆盛を極める都心の大手百貨店目線で見たら、地方のライバルがいなくなり、「漁夫の利」を得たのかもしれないが。「地道に続ける」ことを本来は「努力」と呼ぶのではないか。であれば地方百貨店は「全体最適」のために進んで閉店しているとでも言うのだろうか。

 筆者は今までいろいろな地方デパートのクローズを見てきたが、どれひとつとして「地道な閉店」などはない。百貨店の当事者は悔しいし、顧客にとっては寂しい出来事なのだ。

 いや、また勝手に激高してしまった。ご容赦願いたい。