税と対峙する – 42

平成18年01月20日号(第2311号)

タバコ増税は、多くの国民の総意である
消費税率の切り上げをしないですむ方法がある

 平成18年度の税制改正で、駆け込み的にたばこ税が一本当り約一円の引き上げとなった。自民党税制調査会の幹部は「国民の理解を得られない」と反対論が強かったが、首相の指示や公明党の要望に押し切られた形のようである。

 しかし、一連の動きをみるにつけても「国民」ということばは、実にいいように使われている感がある。たばこ税を引き上げることに、今どれだけの国民が反対するだろうかという点だ。たばこ税を一本一円引き上げれば、増税額は1700億円とも2200億円ともいわれる。仮にマイルドセブン一箱270円の今の小売価格を、一箱1000円になるまでたばこ税を上乗せした場合、実際の増税額は一本36・5円{(1000円―270円)÷20本}ということになる。これを税収でみると、一本当たり増加する税金をおおむね2000億円とみると、2000億円×36・5円=73000億円となる。この金額を消費税に置きかえてみると消費税の税収1%が約24000億円であるので、3%超に相当する。

 なんと、タバコを一箱当り1000円とすれば、消費税は3%税率を切上げしないで済んでしまうのである。つまり、消費税率を8%に切上げすることが次の争点となりそうであるが、これを実施せずに据置きできることになる。

 これこそ大多数の国民の理解をうることができることではないだろうか。タバコ一箱1000円という金額は、現在イギリスの水準であり、決して驚くようなものではない。またもし、タバコを一箱1000円とした場合、誰も買わなくなってしまい、増税効果などないではないかという心配にはこう述べたい。医療経済研究機構の調査によると、喫煙による医療費や病気による労働力損失は年間7兆1千5百億円にのぼる。つまりタバコを吸う人が減れば、国が負担する医療費などの支出は、奇しくも消費税3%分減少する可能性があるわけである。結果的に全く増税できなくても、同様の財政的効果が長期的に期待できるわけだ。

 こうした背景を鑑み、小泉首相も後押しする、タバコ税の本格増税論議に入ってもらいたいものである。