税と対峙する – 40

平成17年10月05日号(第2304号)

サラリーマン増税は陽動作戦か
弱者をねらいうちする増税プランの次なる標的は?

 税制改正における政府の増税方針は、次の2点が明確である。
 一つは、改正案の決定の時とその実施期間に相当期間を置くことである。平成14年12月に事実上決った配偶者特別控除の廃止が、平成16年に実施され、平成15年12月に決った老年者控除の廃止、公的年金控除の縮小は、平成17年から実施される。また昨年(平成16年)に決った定率減税の縮小・廃止は、縮小が平成18年から、完全廃止はようやくここに来て再来年にと方向づけられるという具合である。

 これらはあたかも増税はまだ先のことと思わせることで、その決定を取りつけているようで非常に不自然さを感じる。とくに情報の少ない高齢者にとって、前掲した所得税にかかわる改正のすべてが増税につながる極めて重いものであり、それが波状攻撃のように毎年来ることがその時になってはじめて気づくとすれば、とても危険なことである。

 もう一つの方針は、声の弱い者、全体の中では少数派への課税強化である。典型的な例は今述べた高齢者への課税であり、細かい情報がとれない、或いは組織的に反対の声をあげられないという立場を巧妙に見透かして課税をしてきている節がある。マスコミ等を使って裕福な高齢者の税務上の優遇状況を喧伝し、あたかも改正は正当という雰囲気をつくり上げている。その意味では社会的な中心勢力であるサラリーマンへの増税は当然否定されるわけで、案外課税庁はそれも織り込み済みだったのかもしれない。こうした目立ったテーマを表面化させ、その裏で定率減税の完全廃止などが着実に決められている。

 そして次なる標的は消費税率の切上げである。小泉総理が在任中は「あげない」と明言している一方、着実に税率切上げの議論は進んでいる。まさに国民には先の話の気分にさせて「その日」が着実に決められつつあるのだ。この税率切上げは、たとえば10%になった場合、現状の消費者の可処分所得からはとても吸収できそうな状況はない。その時、ババをつかむのは消費者と直接的にあう事業者ではないだろうか。

 消費税は間接税であり、消費者から消費税を預って国に納めるのは事業者である。当然その税金は事業者にとってスルー(通り過ぎる)のはずだが、税込という義務化されたシステムの中では、消費税は商品本体の価格と一体となって消費場面では立ちはだかる。つまり、消費者にとってはその商品は一つの価格なのである。いきおい、税率のアップ分は事業者負担、つまり商品の実質値下げへとなだれこむ。結局、消費税切上げは社会的中心層である消費者の所得が尊重されて進む場合、少数派の事業者にたいして思わぬ「損税」つまり税金の実質負担者としての重圧がもたらされるのである。そして、この標的とされる最大の事業者は、小売の最前線であるデパートにほかならないのである。