税と対峙する - 37
平成17年07月20日号(第2300号)
給与所得控除の縮小は、共働き夫婦に増税となる
サラリーマンの生活感を
税調はどう考えているのだろう?
政府税制調査会(政府税調)が発表した増税プランは、さすがに諸々で物議を醸し出している。特に、サラリーマン増税と直結する給与所得控除額の縮小案については、政治家が血眼になって反対論をぶって納税者の関心をあおっている。
長い歴史を踏まえて「まずまずのところ」という落し所で位置づけられている給与所得控除額は、給与収入の額に応じて、その20~30%を必要経費として認めるというものである。実際のところ、サラリーマンがそんなに経費を使うはずもなく、現在でも実額経費での申告も認めているわけだが、年間で数人しかいないというのが実状だ。 今回の改正案は、自己研鑽の為の研修費用などを「大幅に認めて」実額控除に切りかえる道をつくろうということのようだが、たとえば家族を養うサラリーマンで、その給与収入から自分の仕事のための経費としてお金を10%以上も使う人はほとんどいないだろう。会社に勤めているからには、会社から支給されたものを最大限生かして身銭を切らないように心掛けるのが、正しいサラリーマンの生き方なのだ。
長い年月の歴史で、変えようのない生活観を政府税調はわからないのだろうか。
例えば、バブルのころに企業が経費を多く使って、つまりあまり必要もない買いものをして税金の負担を軽減する節税がはやったこともあった。しかしこれも、たとえば今ある100円を使えば残りは0円になるが、そのまま残せば40円の税金を払っても60円は残るという当り前の経済原理の中で、経営者は内部留保をはかることを心掛けるように進んでいる。
いわんや、サラリーマンが自分のなけなしの収入を税金が安くなるからといって経費をわざわざ使うなどということは考えられない。少しでもお金を残そうという発想は、個人の方がよほど強いのである。小手先の実額経費控除など何の役にもたたない。それより、今の不透明な税の使途をみるにつけ、せめて概算控除の適用くらいサラリーマンには当り前の特典といえよう。
ところでサラリーマンの内、いわゆるパート主婦たちにとってもこの改正案は不吉なにおいがする。給与所得控除額は最低額を年間65万円としている。つまり年間65万円の収入があっても、その人の所得は0である。これに基礎控除額38万円と合わせて年収103万円が非課税の壁といわれるゆえんだが、この改正案はこの聖域にも踏み込んでくる恐れがあるのだ。
仮に給与所得控除がなくなれば、主婦たちは年収50万円程度でも本人自身が課税を受けることになり、同時に夫は配偶者控除(38万円)も受けられなくなるというダブルパンチを見舞われてしまうのだ。給与所得控除の縮小は、実は共働き夫婦を直撃する大増税プランなのである。