税と対峙する – 26

平成16年7月5日号(第2276号)

政治家は、政治の中身にもっと真摯に取り組め
自己責任の重さを自覚せよ

 参議院選挙が行なわれる。この時期の選挙は翌年度の税法改正と直結する秋冬の選挙と比べ、税金の問題があまり争点にならない。すでに値下げ圧力などの弊害が生じている「消費税の総額表示義務化」や「消費税率の切上げ」など、重大な論点が全く解消されていないにもかかわらず与党はおろか野党も知らん顔を決め込んでいる。結局、政治で飯を食う人は政治がもたらす中身にはあまり関心がないのであろうか。来年以降に本格的に影響が出る高齢者に対する所得税・住民税の課税強化も痛みがまだ高齢者に伝わっていないだけに深刻な雰囲気がないのも心配な点である。

 しかし、増えるのは税金だけではない。住民税の額をベースに計算される国民健康保険料の大幅アップにつながることは必至であり、トータルとして可処分所得の大幅な減少につながることになる。(本紙2/5号、連載17参照)高齢者への課税強化と消費税のさまざまな圧力、いずれも消費の減退を招く直接的要素になっていくだろう。

 こうした問題がみえていながら、どうにもできないのが今の日本の弱さであろう。そのために政治があるはずなのに政治家は誰も戦う構えをみせようともしない。最大の争点とされる年金問題については将来に起こるべきさまざまな点を推測し論議しているが、結論がどうなっても今の政治家の責任にはならないし、法律上も不具合が起きた「その時」にしかるべき措置をとる旨の条項が盛り込まれている。結局「将来の事はわからない」という前提での議論なのである。誰もわからないことだからすべての政治家は雄弁にこの問題を語り合う。年金問題というテーマを政党が政治力を競う材料にしてほしくないというのが国民のいつわらざる思いであろう。

 年金は大切な問題であることは言を待たない。しかしもっと目前に起きるであろう、あるいは起こっている問題に真剣に取組んでほしい。  自分たちの「政治力」を保持することに終始し、本当に自己責任を覚悟して取り組まなければならないことから逃げないでもらいたい。日本の景気はそんなにのんびりした意識では保ち続けることができる状況にはないのである。