昨年インバウンド売上高前年比85%増 過去最多6487億

 日本百貨店協会が1月24日に発表した12月の百貨店インバウンド売上高(免税売上高)は、訪日客数の増加と円安を追い風に、過去最高の33か月連続増加し、前年度比31.1%増の625億9千万円となり12月としては過去最高を記録した。昨年一年間のインバウンド売上高は、前年度比85.9%増加し6487億円となり2年連続して過去最高額を更新した。  
(図表1、2参照) 

 一方、国内を含む12月の全国百貨店売上高は、宝飾品や化粧品の販売が大きく伸びたほか、気温の低下に伴い冬物需要が高まり、主力の衣料が伸びたほか年末商戦も活況であったことから、前年度比2.8 % 増の6616億円だった。24年の年間売上高は、4 年連続前年超えの5兆7722億円(19年比3.6%増)で、コロナ禍前の水準を初めて超えた。昨年の免税売上高が全国百貨店売上高に占めるシェアは11.2%であった。

昨年購買客数、前年比76% 増 過去最多603万人

 12月の購買客数は、14年10月の調査開始以来最多の59万8千人だった。国別では、前月と変わらず中国が最も多く、次いで韓国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシアの順であった。

 昨年年間の購買客数は603万7千人で、これまで最多の18年の524万人を約80万人上回り過去最多を更新した。

売上人気商品、化粧品、ハイエンドブランド、食料品、婦人服飾雑貨

 12月の一人当たり購買単価は約10万4千円で、19年同月(6万8千円)を5割上回った。

 売上の人気商品は、化粧品、ハイエンドブランド(ラグジャリーブランドのバッグ、時計、宝飾品等)、食料品、婦人服飾雑貨、子供服・雑貨だった。

24年の訪日客数、前年比86% 増 過去最多3686万人

 日本政府観光局(JNTO)が1月15日に発表した24年12月の訪日外国人客数(推計値)は、学校休暇や年末年始に合わせた旅行需要の高まりや、日本への直行便や地方路線の増加と円安を背景に、前年同月比27.6%増加し過去最高の348万9800人だった。コロナ前の19年12月比の回復率は38.1%増となった。24年の年間訪日客数は、過去最多の3686万9900人となり、19年の3188万人を約500万人上回った。これは桜・紅葉シーズンや学校の夏休み休暇などピーク時期を中心に全23国・地域のうち20国・地域、特に東南アジア、欧米豪などが単月で過去最高を更新したことによる。
(図表3参照)

12月訪日客数、韓国首位、次いで中国・台湾・香港・米国

 12月の国・地域別の順位は、韓国が87万人で最も多く、次いで中国(60万人)、台湾(49万人)、香港(29万人)、米国(24万人)の順で、この上位5か国が全体の7割を占めた。24年年間ベースでも、この5か国が上位を占め年間を通して訪日していることが分かる。首位は、韓国(882万人)、次いで中国(698万人)、台湾(604万人)、米国(272万人)、香港(268万人)の順で、この上位5か国が全体の4分の3を占めた。
(図表4参照)

25年は4000万人超の見通しも

 JTBが1月9日発表した「2025年(1月〜12月)の旅行動向見通し」によると、24年は円安および物価安などの影響により、回復の勢いが一層増した結果、過去最速で訪日外国人旅行者数が伸びた。25年は近隣の諸国を中心に、それをさらに上回り過去最高となるものの、新型コロナ感染症後の急激な需要回復が一巡することから、前年と比べ伸び率がゆるやかになり4020万人と予測し、回復が遅れている中国については、ビザ緩和措置などの条件が整えば19年並みに回復する可能性がある。

 国内の大型イベントとしては、世界160以上の国・地域や国際機関、民間企業が参加する2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博 4月〜10月)と瀬戸内国際芸術祭(香川県、岡山県 4月〜11月)が西日本であり、他に国際芸術祭あいち2025(愛知県 9月〜11月)、世界陸上競技選手権大会(東京 9月)、東京2025デフリンピック(東京 11月)などがある。

24年インバウンド消費額8兆円突破前年比5割増

 観光庁が1月15日に発表した24年10〜12月のインバウンド消費額(訪日外国人旅行消費額)速報値は、前年比37.3%増の2兆3108億円だった。24年通年のインバウンド消費額は、これまで過去最高の23年の5兆3065億円を53.4%上回り8兆1395億円となり過去最高を更新した。一人当たり旅行支出額は、前年比6.8%増の22万7千円だった。 
(図表5参照)

 国籍・地域別では、中国(1兆7335億円)が最も多く、次いで台湾(1兆936億円)、韓国(9632億円)、米国(9021億円)、香港(6584億円))の順でこの5か国で約66%を占める。

買物代の消費額1兆円増加

 費目別の旅行消費額の構成比率(金額)は、宿泊費が33.6%(2兆7366億円)と最も高く、次いで買物代29.5%(2兆3994億円)、飲食費21.5%(1兆7460億円)、交通費10.7%(8672億円)だった。 

 宿泊費、飲食費、交通費の構成比(金額)が前年から低下した半面、買物代は、前年の1兆4043億円から2兆3994億円にほぼ1兆円増加し、構成比率も26.5%から29.5%に大きく増加した。

買物代は中国が突出

 国籍・地域別の買物代は、中国(7641億円)が突出しての首位で、次いで台湾(4032億円)、韓国(2567億円)、香港(2359億円)、米国(1590億円)。

 一方、一人当たり買物代は平均6.6万円で、最も大きいのは中国(11.9万円)、次いで香港(8.8万円)、シンガポール(7.6万円)、ロシア(7万円)、台湾(6.9万円)の順であった。

 他の費目では、宿泊費では欧米豪が高く、中でも英国が一人当たり支出17万円超、豪州が16万円超と高く、娯楽等サービス費は豪州(3万円)が高かった。

訪日客、百貨店での買い物比重高まる

 コロナ前の19年と昨年の5年間の変化を比較すると、訪日外国人の日本での消費額全体に占める買物代の比率は34.7%から29.5%に低下した。反面、宿泊費がほぼ同比率増加しており、買物よりも宿泊にカネを使ったと考えられる。一方、百貨店免税売上額のインバウンド消費額(買物代)に占める比率は、19年の20%から27%に増加し、訪日外国人の買い物先として百貨店の比重が高まった5年間であった。今後も、こうした傾向が続くかどうかに注目が集まる。
(図表6参照)

30年政府目標、訪日客数6000万人、インバウンド消費15 兆円

 インバウンド消費は、日本の最大の輸出品目で全輸出金額の16.7%を占める自動車産業の17.9兆円(24年財務省貿易統計速報)に次ぐ規模になってきた。観光は、宿泊、飲食、物販など波及効果が広く外貨を稼ぐ重要な輸出産業であることから、観光立国を目指す政府は、30年に訪日客数6000万人、インバウンド消費額15兆円、一人当たり消費額25万円を目標に掲げ、地方創成策の一つとして訪日客の地方誘客、飛行場の拡張始め受け入れ態勢の拡大や、戦略的訪日プロモーション等様々な推進を行うとしている。