地方デパート逆襲(カウンターアタック、以下CA)プロジェクト 食べる本屋さんが本格始動 西武福井店 ~小さなおもちゃ屋さんも併設~

 CAプロジェクトは地方デパートを地域のコミュニティの中心として、その存在感を高めていこうという戦略であり、三年前に三重県津市の松菱百貨店でスタートした。ここを発信地に小さなおもちゃの国は、すでに全国30近くのデパートで展開を進めているが、同様に新しいタイプの書店をコミュニケーションの柱にしようという試みが、一昨年暮れにスタートした″食べる本屋さん〟である。

「知識教養をしっかり食べて生活に潤いをもたらそう」という主旨でネーミングされた食べる本屋さんは、全国の小さな出版社から直接推し本を何種類か買取り、どの本も表紙が見えるようにディスプレイし、ポップカードは出版社自身で書くなど、本の魅力を徹底的にアピールする。

 卸売事業者が衰退し、物流コストが大幅に増加している今、小さな出版社の本が書店に並べられることが極めて厳しくなってきている。人気の本を大量に並べる大手書店と差別化ができないため、小さな本屋さんが少なくなっていく一つの要因にもなっている。

 食べる本屋さんは資本主義の論理ではじかれていく小さな出版社を復活させ、希少な本を消費者に届けることで、新たに本の魅力を感じてもらうことを大きな目的としている。更に、デパートと書店にある共通項である″安心感〟″ワクワク感〟を両社がコラボレーションすることで相乗効果を高めることを期待しているのが、食べる本屋さんで2時から行う″二時のコミュニケーション〟(略して、ニジコミ)だ。

 これは地域の方々が主宰となり、絵画・音楽・医療・映画・鉄道・旅行など様々な文化知識を披露し、参加者にも学んでもらおうという会である。参加者は事前の申し込みの他、その日にデパートで買い物をしている飛び入りのお客さんも大歓迎で、1時間程度のコミュニケーションを皆で楽しむことで一つの場を作っていこうというものだ。

 また、本を出版した人が出版記念会を行ない、知人や友人たちを招いて自らの本について熱く語る場を無償で提供する。自らが主役となって、時間をかけて作り上げた本を販売する舞台を、デパートという華やかな場に設えたことで作者の自己実現につながる。また古い友人との少し誇らしい再会の場ともなる。つまり、本屋は一つの借景としてデパートでのコミュニケーションづくりの裏方を演じるというのが、食べる本屋さんが提案する本屋さんの地方デパート逆襲プロジェクトなのである。

 こうした実績に着目した西武福井店田中香苗店長が、二階の紳士服売り場の一角に食べる本屋さんを招き、令和8年9月に本格オープンさせた。9月5日、6日は食べる本屋さんのアンバサダーである歴史作家の伊東潤氏が、上梓したばかりの「偉人・敗北からの教訓」「海峡の女神」の2冊について出版記念トークショーを行ない、各回30人程度の来場者を得た。BS11の長寿番組「偉人・敗北からの教訓」の進行役を務める伊東氏は、テレビでの顏とは一味違う自由なトークを繰り広げ、観客は大いに楽しんだ。来場者には伊東氏から未出版の柴田勝家や丹羽長秀を描いた小品のプレゼントもあり、大満足のトークイベントとなった。

 また、食べる本屋さんのすぐ隣には、箱に入った小さなおもちゃ(いわゆる食玩)が日本でも有数の規模で集められた小起業支援・経営指導有限会社ザパーティクラブさなおもちゃ屋さんも併設された。大人気の選べるカプセルトイも多数ディスプレイされ、CAプロジェクトの人気アイテムが確かな広がりを見せていることを印象づけている。

 田中香苗店長は、食べる本屋さんを「西武福井店の新たな情報文化発信の象徴としていきたい」と語っている。