デパートのルネッサンスはどこにある? 2026年09月15日号-第145 回 みんなのIPコンテンツ キャラクターはデパートを救う?


ピークからほぼ半減し、都市圏でも閉店相次ぐ
デパートの全国店舗数はピークだった1999年の3 1 1 店から、2 0 2 6 年3 月には162店に減り、5割弱が姿を消した。百貨店ゼロの県も4県(山形、徳島、島根、岐阜)に増えた。更に近年は東京、名古屋、大阪といった3大都市圏でも閉店が相次いでいる。デパート業界の長期的な退潮は明らかだ。
アパレル神話
かつて(およそ30年前)デパートは、デパ地下や物産展で集客し、ファッション(アパレル)で利益を得る構造だった。
デパートマン(失礼!今はデパートパーソンかな)の出世の王道は、婦人服売場への配属であり、紳士服、身の回り、子供服と続いた。雑貨や食品はその次だったのだ。
もちろん広告宣伝や広報、催事担当などの脇道もあったが。彼ら彼女らが、北海島物産展、屋上ビアガーデン、絵画展、駅弁大会などを発案し、客を呼び込めば、それなりに評価はされたが、それで出世するのかと言えば、それは定かではなかった。
もちろん最近は、デパ地下や、物産展を含めたイベントの成否が、人事評価の対象になってきたであろうが・・・。もしも変わってなかったら逆にホラーだが。
テナント化は効率化?
さてファッションはデパートの王道ではなくなった、と言いつつ、それでも海外のラグジュアリーブランド自体は、テナント化して生き残っている。
いつも例に出して恐縮だが、この夏、ついに西武百貨店池袋本店であったパルコ寄りの「本館北と本館中央」にヨドバシカメラがオープンした。面積の半減からMDの大幅な縮小変を迫られた池袋西武は、それでも昨年から徐々に全館リニューアルを進めた。そしてファンドからそごう・西武に来た劉勁(りゅう・じん)新社長が出した答えが「インクルージョン」だった。
ここでそのご卓説(コンセプト?)を詳らかにはしないが、要は「売れるモノ」を残して効率の悪いジャンルは品揃えしない、というドラスティックな政策だ。
だから、新生池袋西武には子供服も玩具売場もない。雑貨も身の回り品もないのだ。
まどろっこしいから端的に述べると、今の池西にはデパ地下と化粧品とブランドショップしかないのだ。
※一応エクスキューズしておくと、ブランドの店内ではファッションやバッグだけでなく、高級腕時計や宝飾、用品小物や一部雑貨も扱っている。
脱百貨店
そして、かつての池袋西武にはあったスポーツ売場とレストラン街は「一見残っている様に見える」が、そこは実は西武ではなくヨドバシの館内なのだ。もっと言えば、カメラと家電は当然だが、玩具もゲームもヨドバシにあるのだ。お年寄りが久々に来店したら、もはや百貨店がどっちなのか判らないであろう。現在「脱百貨店」をテーマに掲げているデパートは多く見受けられる。もし脱ファッションや脱平場(自主編集売場)だけが脱百貨店の中身であるならば、それはもうデパートとは呼べないシロモノなのではないかと、筆者は考える。
百貨店を変えるのではなく、百貨店ではなくなるのでは、と危惧しているのだ。
銀座でも

いやいや、西武批判をしたいのではない。公平を期すために別の例もあげよう。
例えば、東京、銀座にあった松坂屋銀座店を閉じた跡地にオープンした商業施設「GINZASIX(ギンザシックス)」はほぼすべての売場をテナントに充てた。安定した賃貸収入で稼ぐテナント業態はほぼ不動である。おまけに、人件費は削減できるし、当然昨今の労働環境で一番の問題である「人手不足」も心配しないで良いのだ。
筆者の言いたかったのは「デパートにおけるファッションビジネスは、かつての自主編集型からブランド化が進み、最後はテナント出店という形態になった。」という事だ。
海外ブランドのファッションは15~20年の間に単価が2~3倍になっている。もちろん悪しき「円安」のせいだ。おまけにこの20年間、給料は上がらず、ステルス増税によって可処分所得は減る一方なので、一般サラリーマン(失礼!給料を貰っている労働者)にはもはや「高値の花」なのだ。
富裕層以外の顧客にとって、そもそも選択肢に入らない。銀座はもちろん池袋でもだ。
脱みんなのデパート

これが、筆者が良く言う、デパートの衰退の理由、「1億総貧困化」だ。今回の縮小リニューアルにより、池袋西武は、デパート新聞の田中社主の著書のタイトルである「みんなのデパート」ではなくなってしまったのだ。
池袋西武の屋上の「SEIBU」の看板には書いていないが、筆者には見えるのだ「貧乏人お断り」の文字が。歳のせいか、だいぶ視力が衰えて来たのかもしれないが。「池袋西武は百貨店業を続けられず、不動産業に舵を切ったのだ」などと言うと、揶揄(やゆ)していると捉えられそうだが、都心のデパートはどこも、多かれ少なかれそういった課題に直面している。松屋や伊勢丹は堂々と「富裕層シフト」を宣言しているくらいだ。
背景には資材価格や人件費のアップに伴う建設費の上昇があり、新しいビルの採算性を一段と厳しくしている。投資回収に百貨店業態が貢献するという期待度は下がる一方だ。
再開発計画との折り合いがつかず、閉店判断に至った西武渋谷店は再開発ビルとデパートとの相性の悪さを図らずも証明してしまったのだ。
選別と淘汰
前述した様に、新宿伊勢丹も松屋銀座も、インバウンドと富裕層シフトなくしては立ち行かないのだ。「変化に対応するのがデパートの商売」というなら、これもまた「我らの道」なのだろう。
デパートは今、売場を変え、顧客を換え、スタッフを替えて懸命にサバイバルしなければならないのだ。それが出来ない企業は、渋谷でも新宿でも池袋でも、「デパートを続けない」あるいは「続けられない」という選択肢が増えていく。
客はデパートを選ばなくなり、デパートは客を選別し、企業はデパートという商売を選ばない。この「3すくみ」がデパートの売上と店舗数を半減させた理由であり、地方は特にそうだが、デパート淘汰の時代が続く理由でもあるのだ。
「小さなおもちゃの国」
と、出だしから長々と暗い話で恐縮だが、ここからが本題だ。ちょっと身近な例に話を戻そう。
デパート新聞社と東日本大震災雇用・教育・健康支援機構は「小さなおもちゃの国」というタイトルで、全国の地方デパートでカプセルトイの販売イベントを開催している。
本紙前号の3面でお伝えした通り、夏休みとお盆で賑わう8月には、全国17の拠点で「小さなおもちゃの国」が催(もよお)され、月間トータルの売上が1億円を突破した事も記事掲載の通りだ。
何が言いたいのかと言うと、従来からの顧客は「年配の女性ばかり」という地方デパートに、若い世代(中学、高校生)や子連れファミリーを集客する事は可能なのだ、という事なのだ。
キャラクタービジネス
近所の路面店や郊外モールでガチャガチャのマシンを回していた若年層に「カプセルトイを選んで購入出来る」という新しい切り口が評価され、デパートへの集客が出来たのだ。
「小さなおもちゃの国」のカプセルトイの中身はその大半が、アニメやゲームのキャラクターだ。正式にはIPコンテンツと呼ぶらしい。
用語解説:IPコンテンツ(アイピーコンテンツ)とは、知的財産権で保護された創作物やキャラクター、デザインなどの総称。IPコンテンツは「IntellectualProperty(知的財産)」に基づき、著作権や商標権などで保護された独自の創作物や知識を指す。具体的には、アニメ、マンガ、ゲーム、映画、音楽、キャラクター、デザインなどが該当し、形のない情報や表現も含まれる。
ヒーローと魔女
「キヤラクタービジネス」というモノは昔からあり、マンガやアニメの主人公をお菓子やふりかけや運動靴にプリントして売っていた。女の子向けは「魔法使いモノ」が多かったし、驚くべきは半世紀以上たった今でも魔女テーマの作品は人気があるという事だ。
もちろんディズニーやスヌーピーといった外来モノ人気も根強く、迎え撃つサンリオやポケモンといった和製キャラクター達も含め「百花繚乱」と言って良いだろう。
この世界はミッフィーの様に定番化したモノもあれば、モンチッチの様にリバイバル(復活)したものも数多い。
さて、ポケモンの名前があがったところで、弊社の「小さなおもちゃの国」同様、キャラクターのチカラで地方デパート活性化を目指す企画をもう一つご紹介しよう。



『ポケモンローカルActs物産展』
「ポケモンローカルActs」は、″ちいきのちからってすげー〟をコンセプトに、県(道)ごとに選ばれた「推しポケモン」が、地域の魅力を国内外に発信する手伝いをする活動だ。地域の魅力をより多くの方に知ってもらい、さまざまな場所へ足を運んで貰えるきっかけづくりとして、「ポケモンローカルActs」を展開している地域の百貨店と連携した『ポケモンローカルActs物産展』を開催している。
以下に開催した会場を列挙する
宮城県 2025年4月24日(木)~2025年5月6日(火・振休)
主催/開催場所:藤崎
後援:宮城県
福井県 2025年8月7日(木)〜2025年8月17日(日)
主催/開催場所:西武福井店 後援:福井県
宮崎県 2025年12月26日(金)〜26年1月12日(祝・月)
主催/開催場所:宮崎山形屋 後援:宮崎県
香川県 2026年3月26日(木)〜26年4月13日(月)
主催/開催場所:高松三越 協力:香川県
福島県 2026年4月24日(金)〜26年5月6日(水)
主催/開催場所:うすい百貨店 後援:福島県
鳥取県 2026年7月30日(木)〜8月11日(火)
主催/開催場所:丸由百貨店 後援:鳥取県
三重県 2026年8月19日(水)〜8月31 日(月)
主催/開催場所:松菱 後援:三重県
因みに津松菱は「小さなおもちゃの国」発祥のデパートである。詳しくは以下のホームページをご参照いただきたい。
https://tinpanblog.com/pokemon-local-acts-bussan-iwate-2026-guide/
https://www.kankomie.or.jp/special/pokemon/event/detail?id=91
これからの開催予定
岩手県 2026年9月19日(土)〜9月30日(水)
主催/開催場所:パルクアベニュー・カワトク 後援:岩手県
「ポケモンローカルActs物産展」については、以下のURLをチェックして欲しい。
https://local-bussanten.pokemon.jp



IPコンテンツ
筆者が驚いたのは、この『ポケモンローカルActs物産展』を開催した地方デパート8店舗のうち、6店舗(西武福井店、宮崎山形屋、うすい百貨店、松菱、藤崎、PAカワトク)で「小さなおもちゃの国」を開催しているということだ。
※藤崎は9月19日から開催予定。
つまり、これら6店舗のデパートは従来顧客だけでなく、その存亡をかけて、ポケモンやカプセルトイを擁して、新たな顧客開拓に邁進(まいしん)している、ということなのだ。
「キャラクターなんて百貨店らしくない」とか何とか、企画会議でシニア世代の役員からやんわり責められたのでは、などと、安いドラマの一場面を想像してしまう。
もちろん、真のデパートパーソンは、「お客様が来てくれるなら、新しい事はどんどんやろう」というのが本当だろう。
「小さなおもちゃの国」が夏休み期間に17拠点に拡大したのはそう言ったデパートイズムが、今なお健在だからだ。と信じたい・・・
筆者は瀬戸際に立つデパートの未来に、わずかな光明を見出したのだ。
ちょっとオーバーかもしれないが。
筆者は、キャラクター収集が一種の「推し活」だということは解るのだが、「人はなぜキャラクターが好きなのか」というのは正直良く判らない。大事なテーマなので、また別の機会に考えてみたい。

デパート新聞編集長


