情報とデパートその11 資本主義と自由 スティグリッツ著作(一部意訳)要旨

 スティグリッツ氏の著作「資本主義と自由」は、自己の利益を最優先に突き進むことを促す今の資本主義が、ソーシャルメディア産業にとって事業拡張の温床になっていると力説しています。今回は、氏の鋭い指摘の要点をまとめてみました。

【ネットワーク外部性の闇】

 新自由主義的な資本主義が負の外部性を奨励し、利己的で不誠実な社会を生み出した。信用がなくなれば経済システムの機能が損なわれる。

 ソーシャルメディア産業が莫大な利益を享受しているのは競合が欠如しているからだ。通常であれば、それほどの利益があると新規参入する企業が増え、利益が分散される。それが起きていないのだ。その主な理由は、ネットワーク外部性や勝者総取りの枠組みのせいである。利用者は、最終的に生き残ったプラットフォームに引き寄せられると、変えられなくなる。

【プラットフォームの恐ろしさ】

 プラットフォームは、利用者のデータの価値を収益化してきた。また、利用者の弱みにつけ込んで販売を増やし収益をあげて来た。データはほとんど値のつけられないほど貴重な資源であり、とりわけAIの活用においては重要だ。

 大手プラットフォームはより多くのデータをかき集め、ライバル企業を追い落とす。必ずしも他の人々の役に立とうとする意志と能力も示していない。市場支配力が存在する現実の世界では、情報は、企業にとって莫大な価値があるものであり、利益を著しく増やす。なのに、情報を「提供する」利用者は、プラットフォームにとっては顧客でなく商品であり、この商品を売って収益を与えてくれる広告主こそがプラットフォームの顧客なのだ。

 プラットフォームが、顧客を優先することは、当然である。ビジネスモデルが基盤にしているのは搾取や広告であって、財やサービスの提供や生産の効率を向上させることでもなければ、利用者のニーズにマッチした財やサービスを提供することでもない。実際、プラットフォームは、利益を高めるためなら、検索機能の「質」を犠牲にすることさえ厭わない。検索結果のページのいちばん上に有料広告を配置しているのが、いい例だ。財やサービスの生産ではなく、広告に基づいたビジネスモデルがイノベーションの原動力となっている経済というのは、根本的におかしい。プラットフォームが、消費者から富を搾取すればするほど、本来の経済を動かす為の財やサービスの生産費用にまわるお金は、減ることになる。

 このビジネスモデルはウェルビーイングを高める方向でなく、一部の企業による搾取を拡大する方向に向かっている。それは、公正な経済や社会の基盤になりえない。

【筆者補足】

 こうした情報の恐ろしさは、AIを介して更に膨れ上がろうとしています。今月行なわれた国連の専門家会議では、AIの開発能力や利益が米中や巨大企業に集中し、民主主義にも悪影響を与えることが懸念されています。AIにより、勝者総取りがますます明確に現実化していくのです。