2 月インバウンド売上高、4か月連続減 中国客減が響く

日本百貨店協会は3月24日、26年2月の全国百貨店における外国人旅行者向けの免税売上高(インバウンド売上高)が、前年同月比15.5%減って約453億6千万円と、4か月連続の減少になったと発表した。


2月は中国で旧正月の春節に伴う大型連休があったものの、中国政府による訪日自粛要請や日中関係の悪化を背景に、中国本土からの来店客数は5割減、中国人客の売上も約4割減と低迷が続いた。一方、台湾、タイ、マレーシアなどは売上、客数ともに増加。特に韓国は旧正月連休もあり、売上、客数ともに16か月ぶりにプラスへ転じた。
(図表1、2、3参照)
全国百貨店売上高は2か月連続増 国内の高額品需要が下支え
2月の全国百貨店売上高は前年同月比1・6%増の4915億円余となり、2か月連続で前年実績を上回った。売り上げの9割を占める国内顧客向けが堅調で、株高による資産効果を背景に、時計・宝飾品などの高額品が伸びたほか、中旬以降の気温上昇で春物商材の動きも活発化した。
また、各社が企画した外商向け催事やバレンタインデー関連の食品が好調だった。国内顧客の売上が、インバウンド減少分を補い、インバウンド売上高の構成比は前月とほぼ変わらず10.5%となった。
インバウンド購買客数は4か月連続減、中国が首位も大幅減続く
2月のインバウンド購買客数は約41万3千人で前年同月比20.8減少となり、4か月連続の減少となった。
国別では、中国が大幅減ながら最多を維持し、台湾、韓国、香港、タイ、シンガポール、マレーシアが続いた。アジア諸国が上位を占める構図は変わらず、百貨店のインバウンド消費を支えている。
一人当たり購買単価は10万9千円 7か月ぶりの高水準
一人当たり購買単価は前年同月比6.8%増の約10万9千円となり、24年7月以降で最も高い水準となった。過去最高は24年5月の12万6千円。
人気商品は化粧品・ハイエンドブランドが中心
売上構成の上位5品目は、化粧品、ハイエンドブランド品、食料品、婦人服飾雑貨、婦人服だった。中国人客の減少により美術・宝飾が上位から外れた。
2月訪日客数346万人、2月として過去最高 ただしイラン情勢に懸念も

日本政府観光局(JNTO)は3月18日、2月の訪日外国人旅行者数(推計値)が前年同月比6.4%増の346万6700人となり、2月として過去最高を更新したと発表した。
欧米での日本人気が続くなか、春節(旧正月)が前年は1月下旬、今年は2月中旬だったことも追い風となり、韓国・台湾・シンガポールなどアジア各国・地域からの訪日客も増加した。
一方、前年8月に100万人を超えた中国は、10月の中国政府による渡航自粛要請の影響で、39万6700人と前年同月比45%減となったが、他の国・地域が減少分を補った。25年1月から2月までの累計は706万4200人で、前年同月比0.3%増加となった。
ただし、2月28日に米国とイスラエルがイラン攻撃を開始したことによる影響には注意が必要だ。中東の空域・空港の閉鎖によるフライト欠航、欧州から中東ハブ空港(ドバイ等)経由便のキャンセル、原油高による燃料コスト増加と航空運賃の高止まりなどが、今後の旅行需要の重しとなる可能性がある。
(図表4参照)
韓国が108万人で最多 18 の国・地域が2月として過去最高

国・地域別では、韓国が108万6400人で最も多く、前年同期比28.2%増となった。続いて台湾(69万人)、中国(39万人)、香港(23万人)、米国(22万人)の順で、上位5か国・地域で全体の約76%を占めた。
23の国・地域のうち18の国・地域が、2月として過去最高の訪日客数を記録。具体的には、韓国、台湾、香港、タイ、シンガポール、インドネシア、フィリピン、インド、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア、北欧地域である。欧米はスペインを除き2桁増となり、インバウンド需要の多様化が進んでいる。
(図表5参照)
上位5か国の詳細
2月の訪日外国人旅行者数で全体の76%を占めた上位5か国の動向は以下の通り。• 韓国(108・6万人/+28.2%)訪日人気の継続、航空便増加、スクールホリデーの影響で2月として過去最高。• 中国(39.6万人/▲45.2%)春節が2月にずれたものの渡航注意喚起、航空便減少で大幅減。
- 台湾( 69 ・4万人/+36.7%)訪日旅行人気の継続、春節の時期ずれや航空便増加で2月として過去最高。
- 香港(23・4万人/+19.6%)春節の時期ずれと航空座席数増加が影響し2月として過去最高。
- 米国(22・0万人/+14.7%)冬季スポーツ需要の高まり、訪日人気の継続、祝日の影響で2月として過去最高。
観光立国政策の歩みと新基本計画 2030年に訪日客6000万人へ
26年度から30年度を計画期間とする新たな「観光立国推進基本計画」(第5次)が、3月27日に閣議決定された。計画では、30年の訪日外国人旅行者数6000万人、旅行消費額15兆円という従来目標を維持しつつ、地方誘客を強化するための新たな指標を追加した。地方部への訪問意欲が高いリピーターの増加や地方部での延べ宿泊者数の目標が新設されたほか、オーバーツーリズムの未然防止・抑制や観光産業の生産性向上に関する目標も盛り込まれている。
30年の訪日外国人数値目標として、
- 旅行者数6000万人(25年実績4268万人)
- 旅行消費額15 兆円(同9・5兆円)
- 旅行消費単価25万円(同22.9万円)
- 地方部の延べ宿泊者数1・3億人泊(同5873万人泊)
- 訪日外国人旅行者に占めるリピーター数4000万人(同2761万人)
観光立国政策は、03年に小泉純一郎首相が「観光立国懇談会」を設置し、10年までに外国人旅行者数の倍増を目指したことから本格化した(02年の訪日外国人旅行者数は523万人)。
同年4月には、国と自治体が連携してインバウンド拡大を図る「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が始まり、韓国、台湾、米国、中国、香港が重点国に選定された。
その後、13年〜14年に第2次安倍内閣でビザ要件が大幅に緩和され(中国は15年)、インバウンドは急拡大。特にアジア諸国では所得の伸びとともに、近距離・ビザ取得の容易さ・物価の割安感が追い風となり、現在では当初の重点5か国が、現在では全体の約4分の3を占めるまでになった。
日本のGDP、26年に世界5位へ後退 一人当たりGDPは先進国最下位
IMF(国際通貨基金)によると、日本の名目国内総生産(GDP)は26年にインドに抜かれ世界5位に後退する見通しだ。現在は、米国、中国、ドイツに次ぐ4位となっている。
一方、一人当たりGDPでは、円安の進行も影響し、日本は主要先進国の中で最下位の40位に位置している。
10年前まで米国とほぼ同水準で推移していたが、現在、米国は日本の2倍以上にまで差が広がった。アジアでもシンガポールが日本の2倍以上の水準にあり、香港、台湾、韓国も日本を上回っている。
こうした状況の中、アジアや欧米など日本より豊かな国々から、「安い国ニッポン」へ旅行者が押し寄せる流れが強まっている。円安が追い風となり、「日本は買い物天国」との評価が定着しつつあるほか、日本各地の野生動物観察や自然や瀬戸内しまなみ海道でのサイクリングなど、体験型観光を求める動きも広がりつつある。
足元では、中東情勢や中国の訪日規制など不透明要因があるが、中期的には、インバウンドが地域経済や日本経済の発展を牽引する戦略産業として、期待は一段と高まりつつある。
